夏休み

それは、時間感覚が無くなる空間







とある部屋

時刻は9:30

だが、この部屋の主である少女はまだ起きていない




「・・・・・・・・すぅ」




ガチャ


部屋のドアが開く

男だ




「・・・・・」




部屋に侵入した男は、物音を立てぬように、そぉっと少女に近づく




「・・・・・寝ているな」




寝ているかどうか、様子を伺う

寝ているのを確認し――――男は不敵な笑みを零した

そして、自分の顔を少女の寝顔に近づけ――――




「・・・・みっしー、あさだぞー」




ふぅ


耳元に息を吹きかけた




次の瞬間

少女――――天野美汐の可愛らしい叫び声が響いた










「なっ、な、なに、え、あ、そ、あ、あいざわ、さん?えっ?」

何が起きたか理解出来ていないらしい

「朝はおはようだぞ?みっしー」

とても爽やかな好青年の笑顔でいう男――――相沢祐一

「えっ、あ、はい、おはようございます・・・・・・って、相沢さんっ!!?」

覚醒したらしい

「よう」

「よう、じゃありませんっ!!な、なんでこんな所にいらっしゃるんですかっ!!」

自分の寝ているところを見られたからか

パジャマ姿を見られたからか

タオルケットでパジャマ姿を覆いながら真っ赤な顔で怒る天野

「いや、みっしーを起こしにきたんだよ」

「そ、だから、なんで貴方が起こしにきているんですかっ!!」

「何恥ずかしがっているんだ。俺と天野の仲じゃないか」

「〜〜〜〜〜っ!!」

さらに顔を赤くする天野

「いや、さ。

 ちと今日はいつもに比べて早めに目が覚めたんだよ」

手品のタネ明かしでもするように、何故か自慢気に言う祐一

「・・・・・で?」

まだ顔を赤くしながらも、話を聞く

「で、名雪は朝練でいなくてヒマでな、ブラブラ散歩をしてたんだよ。

 そしたら何故か偶然にもこの天野家の前に着いた」

・・・・・そうだった

つい先日にここ、つまり私の家を教えたんだった





あの時は大変だった

親は泣きそうなほど感動するし

自分の娘のことをどう思っているのだろうか

終いには『結納はいつにするか』などと言う始末

・・・・・と、そのことは今は置いとくとして





「で、そこからどうして私の部屋に繋がるんですか?」

「うむ、一人で散歩は寂しかったから天野も誘おうと思ってな。

 呼び鈴押して『あーまっのさん、あっそびっましょ』って言ったんだ」

「・・・・・・・・」

頭痛がした

「そしたら天野のおばさんが出てきた。

 で、聞いたら『まだ寝てるのよ、あの子・・・・そうだ、ちょっと起こしてあげてくれないっ?』と」

「・・・・・もういいです」

そのうち家出しよう

なんとなくそう心に決める

「天野」

「・・・・はい?」

「・・・・可愛かったぞ」


ボシュ


顔が再び赤くなる

どうして、この人はそう、真面目な顔でそんなことが言えるのか

「いやぁ、普段の天野もいいが、無防備な寝顔もカワイイなぁ。

 また見せてくれ」

「〜〜〜〜っ!!」

からかわれている

それは分かっているのに、顔が赤くなるのを押さえられない

恥ずかしい

でも・・・・・・・嬉しい

「さて、天野」

「ひゃ、ひゃぃっ!?」

「行くか」

「えっ、ど、何処へ」

「散歩だ。いやか?」

「い、いえ、むしろ、よろこ・・・・・じゃ、なくって、あの、着替えなくては・・・・」

「ん?ああ、そうだな。

 天野の可愛いパジャマ姿を他の男に見せるわけにはいかん」

・・・・・ダメだ

やっぱり顔が赤くなる

「・・・・そ、それでは着替えますので・・・・」

「ああ、いいぞ。俺はここで見てるから」

「・・・・部屋から出てくださいっ!」

「残念」

そう言って笑いながら部屋から出て行く祐一





「・・・・・・はぁ」

なんて、朝だろう

・・・・・とにかく、起きよう










今、私達はものみの丘に向かって歩いている

空は青く晴れ渡っていた

「清清しいな、天野」

「・・・・・はい」

「なんだ、元気がないな」

「・・・・ヒドイです」

あれだけからかわれたら元気もない

「はっはっは、すまんすまん」

「・・・・・はぁ、もぅいいです」





「しかし、意外だったな」

「・・・・何がですか?」

「いや、まさか天野がお寝坊さんだったとはな」

「低血圧なものですから・・・・」

「そっか、俺はてっきり朝五時に起きてラジオ体操でもしているかと」

「・・・・どういう意味ですか」

思いっきり半眼で睨みつける

「冗談だ」

効いてない

「だけど、カワイかったなぁ、天野の無防備な顔・・・・」

そう言って考え込む祐一

「ちょ、何考えているんですか」

顔をまた染めつつ、抗議する

「ん?いや、これからも天野の色んな顔を見てみたいなぁって」

「・・・・え?」

それって・・・・・

「おっ、その顔も珍しい」

「ちゃ、茶化さないでくださいっ!」

「はははは・・・・」

急に、笑うのを止める祐一





「・・・・・天野、いや、美汐」

「っ!・・・・はい」

祐一が美汐と呼ぶ

本当に真剣な話をする合図だ





「これからも・・・・・一緒にいてくれるか?」

「・・・・はいっ、喜んでっ」





長い間、出来なかった笑顔が

祐一が一番好きな笑顔が

自然と、出ていた










おまけ


翌日の朝、祐一の部屋


「・・・・・なんで、ここにいる?」

まだ寝ぼけ眼の祐一が問う

「朝はおはようですよ」

「・・・・ああ、おはよう。で、何でいるんだ?」

「家出しました」

「ふ〜〜ん・・・・・はぁっ!?」

「お願いしますっ!ここに泊めてくださいっ!」

「い、いや、ほら、秋子さ―――」

「了承してもらいました」

「・・・・先手を打たれたか・・・・だ、だけど」

「・・・・・一緒に居てくれるって言いましたよね(///)」

「・・・・・・・・(///)」

「・・・・・・・・(///)」

「・・・・・分かったっ!」


グイッ


「きゃっ!」

「寝直すぞ」

「え、ちょ、あ、そ、そこは・・・・・あ」





一階

「・・・・・朝ご飯、いらないのかしら」

「・・・・くー」









エロ稲ー(笑)

モドール

[PR]動画